優良建築家ネットワークの歩み

一時は本書の配布を中断したこともありました…。

『家づくりの教科書』では、これまで業界内でひた隠しにされてきた内容も含めて建築業界の現状と実態について、ありのままにお話ししています。長年、建築業界に身を置く立場として、正直、「ここまで公開していいのだろうか…」という迷いがなかったわけではありませんが、実態を知り得る立場にいるからこそ、業界の悪しき習慣や常識も含めて本当のことを皆様にお伝えしなければならないと思い、今回筆を執りました。

家づくりは多くの人にとって一生に一度の、そして最も高い買い物です。だからこそ皆様には決して失敗をしてもらいたくないのですが、欠陥住宅や手抜き工事を始めとする新築トラブルは社会問題になるくらいに多発しています。もちろんこれは全て業者側に責任がありますが、消費者側にも一抹の原因があります。それは家づくりのことについて、あまりに知識がなさ過ぎることです。何も知らないから業者の言いなりになってしまい、家づくりに失敗してしまうのです。ですからトラブルに巻き込まれないためには、最低限知っておくべき家づくりの知識を知ることが不可欠であると考え、私どもではこの冊子のような形での家づくり情報の無料提供サービスを開始しました。

さて、おかげさまで、多くのお客様から冊子のお問い合わせをいただき、本当にたくさんのお喜びの声をいただけるようになりましたが、その一方で、冊子の内容に関する業界からの反発も相当のものでした。脅迫めいた嫌がらせのような電話が掛かってきたり、一度は普通に広告を出せた広告媒体社さんからの「他の広告主さんの手前…」という理由で広告の出稿を断られたり…。また当初は、『優良建築家ネットワーク』にご参加いただいている建築家のリストを本書の中に掲載していたのですが、その一部の方々にまで嫌がらせの被害が及び、多大な迷惑を掛けてしまいました。そのような相次ぐ事態に社内のスタッフ達も弱気になり、一時は冊子の配布を中断し『優良建築家ネットワーク』の解散を検討した時期もありました。

しかし、そんな時に私たちを勇気づけ力強く支えてくださったのが、全国各地で活躍している建築家の方々や中小の工務店さん達でした。大手住宅メーカーの下請けや孫請けの仕事をしている工務店は、立場が弱いためコストを切り詰められ、仕事に見合った十分な利益を確保できない場合が少なくありません。また、全国各地には決して有名ではないけれども、確固たる信念をもって本当にいい家を造っている建築家の方がたくさんいらっしゃいますが、彼らも自分でお客さんを見つけられないために、大手住宅会社の下請けに甘んじている現状がありました。


「あなた達がここでやめてしまったら、建築業界はずっとこのまま変わらない。
多くの人が本当にいい家を安く建てられるようになるためにも、
この取り組みだけは、ぜひ続けていってほしい」

これは今でも決して忘れることのできない、ある著名な建築家の先生からいただいた言葉です。その他にも多くの建築家の方や全国の工務店さんからも力強い激励をいただき、また、冊子をお読みなった消費者の方からも心温まる感謝のお言葉を多数頂戴し、多くの人達に支えられ私ども「優良建築家ネットワーク」は今日に至っています。消費者にとって決して有益とは言えない現在の家づくりの環境を、情報提供によって改善し、消費者と建築家、工務店の三者の利益を実現していくこと。これが私どもの社会的な使命です。

早いもので発足から15年が経ち、会員のお客様からは非常に高い評価をいただき、建築家の方や工務店さんからも大変喜ばれ、今となっては「このネットワークを立ち上げて本当に良かった!」心の底からそう思える状況になりました。また、最近では業界の中でも「建築家との家づくり」が話題になり一つの時流として注目され始めています。

次第に全国の様々な地域のお客様や建築家の方からもお問い合わせをいただくようになり、私たちの地道な取り組みは大きく拡がりつつあります。各地の様々な場所でお客様や建築家との良き出逢いがあり、また、様々な意見やアドバイスを各先生方や建築業界の各方面からも頂戴し、『ゆうネット』は多くのお客様に喜んでいただける組織に成長しつつあります。

これからも初心を忘れることなく「新築・リフォーム環境の改善推進」を合言葉に、私たちにしかできない価値ある活動によって社会に貢献し続けていく所存です。今後とも皆様方のご愛顧を賜りますよう、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

ゆうネット 代表 堤 猛

家づくりの教科書